CARE FOR PERFORMANCE
アウトドアウエアを永く快適に使う秘訣
製品寿命をのばし、パフォーマンスと環境配慮を追求しよう
「GORE-TEX」 プロダクトは洗えます!撥水機能を何度も回復し、あなたのウエアを永く快適に使い続けましょう!!
「GORE-TEX」を製造販売する日本ゴアと、アウトドアブランドの「アークテリクス」、「ザ・ノース・フェイス」、「パタゴニア」、家電メーカーの「パナソニック」は、アウトドアウエアを長期間にわたって快適に使用するために5社合同のトークイベント「CARE FOR PERFORMANCE」(パフォーマンスのためのお手入れ)を東京・品川で開催しました。高い防水透湿性をもった「GORE-TEX」プロダクトを永く快適に使うためには、日頃から“洗ってお手入れ”することが大切です。PFAS不使用でもパフォーマンスはそのままに。あなたが愛用するアウトドアウエアを永く快適に使い続けるために、業界の垣根を超えた挑戦が始まっています。
パタゴニア日本支社 マーチャンダイジング
テクニカルラインコーディネーター
片桐 星彦さん
お洗濯は自宅で簡単にできるケア
洗ってパフォーマンスを復活させて
テクニカルな製品の撥水性が低下した状態は、居る場所や標高帯、季節によっては人の命にも関わる重大な問題です。お洗濯は自宅で簡単にできるケア(お手入れ)ですし、製品のパフォーマンスを復活させるだけでなく、製品寿命を長くすることにもつながります。この10年で製品や素材も進化し、防水性ウエアに適した中性洗剤の選択肢も豊富になりました。ウエアは是非ご自宅で洗って長持ちをさせてください。
アメアスポーツジャパン アークテリクス
アフターセールス/ ReBIRD マネージャー
室田 剛さん
修理でも洗った製品のほうが
製品寿命は長くなります
ケアと修理の専門部署である「ReBIRD」のコンセプトは「ゴミをださない製品デザイン」です。修理をする上でも日頃から洗って使用いただいた製品のほうが製品寿命は長く、逆に、洗濯をせずに使い続けた製品は修理が不可能な“致命的なダメージ”を受けていることが多いです。撥水力が低下すると身体から出た蒸気が外に出られず、衣服内に水が溜まります。快適性を保つ上でも洗濯はとても重要です。
ゴールドウイン ザ・ノース・フェイス事業部
マーケティンググループ 部長
山下 浩平さん
2025年の“大きな変化”を前に
業界が束になって課題の解決を
ゴアテックスさんの“PFASフリー”化と同様に、ザ・ノース・フェイスも2025年秋冬から防水の素材に関しては100%PFASフリーに切り替わります。多くの方が“大きな変化”を実感されるこのタイミングで、業界が束になって課題解決の方法を伝えたいと集まったのが今回の狙いです。将来的に、企業の枠を超えて「洗濯の仕方」や「お手入れの重要性」をわかりやすく統一した形で提案できると理想的ですね。
パナソニック ランドリー・クリーナー事業部
衣類ケアBU 商品企画部
中込 光輝さん
「はっ水回復コース」で
“衣類のロングライフ”に貢献を
パナソニックでは衣類ケアを通じた“衣類のロングライフ”をコンセプトに、防水性ウエアの撥水性を回復させる「はっ水回復コース」を搭載した洗濯機「LXシリーズ」を開発しました。汚れなどで倒れてしまった生地表面の撥水基(はっすいき)は、乾燥の熱を加えることで再び起き上がるメカニズムをもっています。撥水性がご自宅で何度も蘇らせることができることを多くの方に伝え、衣類を長く愛用してほしいですね。
日本ゴア ファブリクス・ディビジョン
GORE-TEXブランド アカウントマーケティング
阿部 功さん
ゴアテックスは洗えます!
機能を回復させて長く愛用を
ゴア社は25年までにPFASフリーへ全面的に移行する予定ですが、素材が変わっても洗濯の重要性は変わりません。ケアすることで製品は長もちし、本来の性能を発揮 (パフォーマンス)できます。「どんな頻度で、どう洗ったら良いかわからない」との声をまだ多く聞きますが、このイベントが製品を快適により長く使用するために、「定期的に洗濯をする大切さ」や「ケアすることの当たり前」につながる一助になれば嬉しいです。
撥水機能を回復させよう
撥水のメカニズム
ウエアの生地が水を弾き、水滴として転がり落とす“撥水のメカニズム”は、生地表面に立っている撥水基(はっすいき)にあります。撥水基が立った状態では水を弾き、汚れや摩耗などで撥水基が倒れた状態では生地の表面が濡れ、衣服内に水が浸入していなくても冷たく湿った感覚がします。撥水機能を回復するためには、汚れを落とし、熱を加えることで簡単に回復させることができます。(日本ゴア阿部さん)
正しい情報をもっと多くのユーザーへ
「ゴアテックス」を洗ってください
ゴア社のアンケート調査では、アウトドア活動をする人の中で「ゴアテックス」の製品を「洗っている」と答えた人は「53%」で、その一方「洗っていない」と答えた人は「23%」でした。「洗っていない」理由は、「洗い方がわからない」「あまり汚れていない」「洗わなくても性能が落ちない」など様々。「洗うことで機能が回復し、長く快適に使用できるという正しい情報をもっと多くの人に届けていきたい」(日本ゴア)と語ります。
パナソニックの洗濯乾燥機
「LXシリーズ」が売れています
パナソニックが開発したドラム式洗濯乾燥機「LXシリーズ」は、衣類の撥水性を回復させる「はっ水回復コース」を搭載しています。着用にともない低下した撥水機能をヒートポンプ乾燥の熱を使用して回復させるこの機能は、アウトドアウエアのパフォーマンスを長もちさせるために「最適な温度や時間」の検証を繰り返して完成!「おかげ様で発売以来、好評をいただいています」(パナソニック中込さん)
ゴアテックスの意欲的な目標
25年からPFASフリーへ全面移行へ
ゴア社は2022 年に「ePE」(延伸ポリエチレン)メンブレンを採用したゴアテックスファブリクスを発売し、2025年までに PFASフリー*へ全面的に移行する予定です。環境配慮とパフォーマンスを追求した「ePE」へ移行は、業界を超えた大きな変化。しかし、素材が変わっても“ケア”の重要性は変わりません。
※有機フッ素化合物(パー及びポリフルオロアルキル物質)を使用せずに製造していますが、微量含まれる可能性があります。
知床国立公園60周年・世界遺産20周年記念
「知床アドベンチャーフェスティバル」
自然、文化、遊びを未来と次の世代へ
日本の国立公園の多様な魅力を
もっと多くの人とともに
Goldwin Inc.
株式会社ゴールドウイン
雄大で豊かな北海道・知床の大自然の中で、国立公園の今と未来を考える-この秋、ゴールドウインと斜里町、スノーピークと羅臼町の4者が共同し、知床国立公園60周年・世界自然遺産登録20周年を記念した「知床アドベンチャーフェスティバル」を開催しました。企業や自治体の垣根を超え、環境省とも連携した、前例のない取り組みの“中心”と“現場”には、いつもゴールドウインの森さんがいます。2020年、ゴールドウインは環境省と「国立公園オフィシャルパートナーシップ」を締結し、日本の国立公園の豊かな自然、文化、歴史を未来に残す活動に取り組んでいます。ゴールドウインが目指す“未来”について、アウトドア業界一の人気者の森光さんに聞きました。
森 光さん HIKARI MORI ゴールドウイン 取締役専務執行役員
1963年東京生まれ。信州大学卒後、バンクーバーなどで暮らし帰国後、創業後間もないパタゴニア日本支社に入社、REIジャパン、オニールなどを経て、2004年ゴールドウイン入社、以来「ザ・ノース・フェイス」に携わる。15年ノースフェイス事業部長、16年執行役員ノースフェイス事業部長、21年常務執行役員事業本部長、22年取締役常務執行役員事業本部長。学生時代から山登りに熱中し、ゴールドウイン在職中の2019年に南米大陸最高峰のアコンカグアに登頂し、2022年には北米大陸最高峰のデナリへの登頂に成功。現在は富山県在住でゴールドウイン本店(小矢部市)に勤め、登山とスキー、サーフィンを愛するアウトドアマン。
新しい可能性を拓く
国立公園の魅力を“発見”し
未来へつなぐ取り組み
―ゴールドウインでは知床をはじめ、国立公園に関わる活動が広がっています。
森さん:そうですね。日本全国には今、30を超える国立公園があって、各地に四季折々で変化する豊かな自然や、古くから息づく文化や歴史があります。日本の国立公園は世界的にも珍しく、人々が暮らす場であることも多いという特徴があって、固有の風土で育まれた生活の場でもあります。一方で「国立公園」という存在は知っているものの、実際はよく知らない、訪れたことがない、という方も多い。国立公園の「持続可能な保全と利用」と言っているのですが、国立公園に根付く自然、文化、暮らしの、まだ知られていない魅力を“発見”して“体験”してもらいたい、というのがこの取り組みの目的です。
「日本の国立公園を、もっと良いものにしたい」という想いは、バックパッカーでロングトレイルを日本に広めた第一人者である作家の加藤則芳さん(故人)の想いであり、加藤さんを「ザ・ノース・フェイス」を通じてサポートしてきた当社の想いでもありました。そうした時に、当時の環境省の国立公園利用推進室室長の岡野隆宏さんとお会いする機会があって、自然環境保全のことや国立公園のことをもっと多くの方に伝え、利用してもらいたいとの想いに共感し、パートナーシップを結ぶことになりました。実際に国立公園に赴いていただく入口としてツアーやキャンペーンを企画し、現在は「National Parks of Japan」というプロジェクトも実施しています。身近だけど遠かった、日常ではなかなか気付くことのできない、新しい日本を知ってもらう活動にも取り組んでいます。
―今回の知床での取り組みも異例の取り組みですね。
森さん:こちらもご縁があって、知床で長年フィールド撮影やワークショップをしている写真家の石川直樹さんから声をかけていただいて、当社の社長の渡辺貴生と一緒に斜里町を訪れたことに始まります。「私たちに何が求められ、何ができるのか」というディスカッションを目的にお邪魔したんですが、その時に渡辺が『ここ(知床自然センター)にお店を作りましょう』と即決してしまったので、私も驚いちゃって(笑)。約束通り19年5月に「ザ・ノース・フェイス/ヘリーハンセン知床店」をオープンし、その後、21年10月9日に斜里町と「自然と共生する社会の実現へ」をテーマに包括連携協定を締結させていただくことになりました。
今回(9月14-15日)の「知床アドベンチャーフェスティバル」も縁あってのもので、こちらも21年の当社と斜里町の包括連携協定締結の前日(8日)に、知床半島の“東側”の羅臼町とキャンプ用品のスノーピークさんが包括連携協定を締結されたことがきっかけとなります。スノーピークの山井太社長とは以前から「何か一緒にできるといいですね」と話をしていて、今回の提携があり「知床はどうかな」「じゃあオレ動いてみますよ」ということでこうした形になりました。偶然ですが、知床の2つの町が2つのアウトドア企業と提携をし、知床財団さんをはじめ沢山の方が動いてくださって実現できたのが今回のイベントです。企業や自治体の枠を超える催しなんて“夢”みたいなことですが、実現できて嬉しいですね(笑)。
―モノを作るだけではなく、コトも作る企業に?
森さん:いやあ。当社がモノ作りから脱却することはないと思いますが、やっぱりやりたいのはモノを作って売るだけじゃなくて、“モノを使う人や機会を増やす”ことですよね。こうしたイベントを行うことで、私たちが何者かを知ってもらう機会を増やしたり、商品を使う人のところへ行く。ローカルのお店だからできることが沢山あって、お店のスタッフが土地ごとに地元の人たちとのコミュニケーターになることで地域の要望に応えています。
この「ザ・ノース・フェイス/ヘリーハンセン知床店」で言えば、観光客やインバウンド需要もありますが、半分以上は地元の需要です。毎日がアウトドアの暮らしの中で求められ、必要に応えられることは我々にとって、とても有難いことです。ウトロ港は鮭の水揚日本一なんですが、漁業協同組合の皆さんには「ヘリーハンセン」に「SHIRETOKO FISHERMAN’S PRIDE」のロゴを入れたウエアを購入して愛用いただいています。本当に必要な人に必要なものを届けられることは、フィールドストアの最大の利点ですね。
人を挑戦に導き、
人と自然の可能性をひろげる
新しいパーパスをともに
―ゴールドウインでは今年、新しい中期経営計画を発表しました。
森さん:ゴールドウインでは、今回の新しい経営計画に向けて、「人を挑戦に導き、人と自然の可能性をひろげる」(Envision new possibilities for humanity in nature)ことを企業のパーパス(目的)に位置づけました。これには子供たちの可能性を引き出すことや、常識を突き抜ける想像力で世界に貢献すること、感動を創造することなどが、バリュー(価値)として含まれていますが、社内に向けては自分たちが今いる場所を改めて確認し、これからの地球と人々と共にあるべき新しい未来の実現を目指しましょう、という意味を込めています。
私自身これまでアウトドア業界を中心に働いてきましたし、山とか自然が好きで仕事をしてきましたが、時代を追うごとに社会と自然との関わりが大きくなって、社会がアウトドアを求めるようになってきたと思います。社会問題や環境問題を解決し、新しい世代に今より良い社会を残したいという想いは、未来につなぐべきものだと考えています。
自然の楽しさは体感することで身に付きますし、同時に自然を守ろうという意識が芽生えることにもつながります。国立公園の取り組みや、自治体や地域と学びの機会をつくる取り組みには、平たく言えば「手を取り合うことで、何か良いことができるんじゃないかな」との思いがあります。
やはり当社1社だけではできることも限られているし、自治体や企業・ブランドが連携しながら各地の自然や環境の魅力を伝えることで、1社ではできない“奥行き”や“幅”のある事ができますし、話題性や注目度も高まります。コンサベーション・アライアンス・ジャパンや、POW Japanのように企業や個人の枠を超えて活動し、業界全体で発信できることを増やしていくために、オープンに多くのブランドが活躍できる場が増えていくと良いなあと考えています。
それぞれの土地の自然や文化に触れつつ、それを未来につないで行くために、今なにが必要なのか。発見と冒険のために、ゴールドウインがこれまで培ってきたフィールドでの知見を活かせると良いですね。
社会的な意義や役割を果たす
ニッチのように突き抜けた価値を
未来志向の会社を目指して
―「ザ・ノース・フェイス」についても教えてください。
森さん:「ザ・ノース・フェイス」は、おかげさまで昨年も売上高が975億円と成長を続けていますが、今後も持続的な成長をしていきたいと考えています。今後5年で売上高は1280億円を目指していますが、注力したいと考えているのはトレイルランニングやライフスタイルで求められるシューズや、登山やランニングなどのパフォーマンスウェア、日常使いやファッションなどのライフスタイルウェアなどです。
特にシューズでは、まだ年間を通じた大きな成功ができていないので、5年先の100億円を目指しながら新しいチャレンジをしていきたいと続けています。防寒ブーツのヌプシブーティや夏場のサンダルだけでなく、年間ビジネスを構築するために独自性と機能性を追求したアイコン(象徴)になる商品を作っていきたい。アパレルでもそうですが、技術革新を追求して、「サミットシリーズ」や、25年春から導入するファッションラインの「ラボ」シリーズなどのように、コアになる商品の開発に取り組みます。
今の若い世代のアウトドアユーザーの中では登山やキャンプだけでなく、超軽量な装備を工夫して山道を行くUL(ウルトラライト)や、自然道を数週間をかけて歩くロングトレイルなど新しいアクティビティが人気です。多様化し、ムーブメントを起こしているアクティビティの中でも「ザ・ノース・フェイス」だからできる革新的な商品を開発することで、新しい冒険や旅に挑戦する人たちの多様でパーソナルなニーズに応えることができると思います。
春から販売組織を流通・アカウント別からエリア(地域)別に変えたのも、それぞれの地域のお客様に対してより良くブランドを届けるためです。例えば、日本のアウトドア用品の市場規模は都道府県別で言うと北海道は8位ですが、ゴールドウインでは東京(1位)・大阪(2位)に次いで3位で、人口当たりの売上高は1位です。当社が目指す姿をもっと多様性をもって表現することで、地域の方が期待する以上の価値をお届けできると思います。
―森さんご自身がこれから挑戦したいことは。
森さん:会社でいえば、次の世代を育ててゴールドウインをもっと良い会社にしていくことですね。おかげ様で、「ザ・ノース・フェイス」を筆頭にゴールドウインはこの15年間、新しい価値を提供することで成長を続けてきました。それは「見えないものにこそ、真実の価値がある」であったり、「強い、速い、きれいな経営」などの当社の経営理念が正しかったことの現われですし、私たちが信じて追求してことへの評価なので喜ぶべきことだと思います。一方で、この15年間ぐらいで入社した社員は当社と業界の“成功事例”や“成功体験”しか見てこなかった部分もあって、そこには危機感があります。
ブランドのロゴさえあれば売れるなんてことは絶対なくて、それぞれのブランド・企業だから実現できる価格以上の価値や、期待以上の喜びを提供できなければ淘汰は必然です。先ほどのシューズの話もそうですが、新しい市場を創るなら「スタートアップのニッチブランド」のように突き抜けた価値を提案しないと届かない。ゴールドウインに入社してくれたからには、当社を愛し、一緒に世界で勝負する人であってほしい。企業って営利を目的にしてますけど、社会的な意義や役割も大きいんですよね。次の世代の人たちが日本はもちろん世界で活躍し、社会に貢献する未来志向の会社であり続けたいと考えています。
個人的には、やっぱり山が好きなのであと10年ぐらいは山に登りたいですね。今年はゴールドウインチャイナの社長たちと四川省の5000m級の山に登りましたし、70歳まで考えるとあと8回ぐらいは行けるかな。以前からロングトレイルにも興味があって、ジョンミューアトレイルも歩きたいですし、行きたいところがまだまだありますね。アコンカグア(南米最高峰)に登った時も会社から長期休暇をもらいましたが、僕がサラリーマンになったのは長い休みがもらえるからなので(笑)。そうした意味でも、良い仕事を続けて、人と自然の可能性を広げる。仕事でもプライベートでもまだまだ“登りたい山”がたくさんあります。